人と馬の狭間で。

人について思考を巡らすブログです

会社が学校なんだよ 〜入社から6年が経ったらそうなってた話〜

この記事は、CA14 2020を迎えよう Advent Calendar 2019 - Adventar の3日目になります。 2019新卒のアドベントカレンダーにあてられて、 我らが同期 @neo6120 が作ってしまった流れにあやかり、 老体にムチ打ちながら書いてみます。

サイバーエージェント(CA)2014新卒として入社してから早6年が経とうとしている今日、 個人的に嬉しいニュースもあったので、特にキリがよい時期ではないけれど、前々から書きたかったこのタイトルでここ3年ぐらいを振り返ってみる。

会社が学校なんだよ

その昔、愛するCA14同期の松村くんが活きの良いブログを書いて話題になっていた。 なんとそのブログを元にTVドラマまで作られ、大いに世の中に知れ渡った。

彼は当時、声高にこう叫んだ。

「会社は学校じゃねえんだよ」

そして今僕はこう叫びたい。

「会社が学校なんだよ」

と。

これは何も彼の思想に対する反論でもなんでもない。 そう、ネタなのだ。この記事のピークはココだといって過言ではない。 ここから先は僕の個人的な話のみがつらつら続くだけで、 タイトルから何らかの思想を期待した方々はそっとお帰りいただいた方が時間の節約になってよいと思う。

CAに入社して4年目に突入する頃、僕は会社が学校になった。

弊社は新たなマーケティング手段として対話接客に注目し、大阪大学の石黒研究室と共同研究を始めた。 並みの共同研究ではない。大阪大学の中に共同研究講座、つまり弊社の研究室を作るという取り組みだ。 会社から研究員を常駐させ、新たにアカデミアの先生方を特任ポストとして雇い入れる形。

www.cyberagent.co.jp

ウチのボスから「これやらない?」とお誘いがきて、 当時入社3年でデータ分析のマネージャーポジションになりかけていた僕は1日考えた。 正直、当時の仕事はMTG職人に近く、自分の作業時間は19時以降しか空かないようなそんな日々で、 イチ技術者としてなんとかしないとなと思っていた。 家に帰り、ちょうど子供を身ごもっていた大阪出身の妻にこのお誘いを話してみた。

「ええやん」

2秒とかからず、我が家の国家主席からOKが出た。 そらそうだ。国家主席の実家の近くに引っ越せるのだから。 そのとき「しまった、外堀から埋められた」と感じたのは内緒だ。 そういう点でウチのボスは非常にしたたかだといつも思う。

そんな流れで、僕は会社(出勤先)が学校(大学)になったのだった。 ただ、ワクワクはしていた。とても。 おびただしい数のMTGから解放されることもそうだが、 研究して作った技術をビジネスに昇華する、それがやりたいと3年ぐらい、もがいて頑張っていたので、 学部時代に触れた Human-Computer-Interaction の分野でビジネスを見据えた研究ができることが何より面白そうだと思った。 この次の3年間で研究者としてなんとか地力をつけたいとも思った。

東京にいるたくさんの仲間から離れて、一人大学にいくのは心寂しい気がしたが、 きっと新しい生活は目まぐるしくも楽しいだろうなと思い、ワクワクしていた。 大阪に到着したそんな僕を待ち受けていたのは下記のような環境だった。

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共同研究講座の最初の部屋

うん、いいよね、レジャーシートは必須ですよね(遠い目)

垂れてるケーブルは、コンセントがなぜか天井にしかなく、頑張ってつけた電源タップのケーブルです。廃墟感あっていいですよね。

我々の共同研究講座に参画してくれた特任准教授が持ってきてくれたレジャーシートに荷物を置き、 この広い空間に2席向かい合わせの机で作業する。そんなところから始まった。 右も左もわからず、何を議論すべきかも学びながら、とにかく何かアウトプットしないといけない。 良くも悪くも、この会社は本当に裁量をボコッと個人に渡すよなーと思いながら、試行錯誤を続けた。

今では、特任助教が1名増え、CAの研究員が3名増え、石黒研の学生が3名増えて、だいぶ大所帯になってきた。 部屋も写真の部屋から移動し、広めな部屋を使わせてもらっている。 やれる実験の規模も、投稿した論文の数も、出願した特許の数も増えてきた。 研究活動や風景はこの辺にあるので、もし興味あれば。

企業での研究と、大学での研究の違い

研究活動をはじめてから一番面白かったのは、企業と大学の議論の違いだ。 企業で研究の議論をするときに、前提としてあるのは、その技術がゆくゆく事業に活きるかどうかだ。 事業に活きる可能性があるから企業は研究活動に投資し、 数年後の新規事業立ち上げや既存事業の底上げ、効率化などを目的とする。 それが前提となるので、「今ある体験を良質にする」議論が比較的多い。 自動化や効率化はその最たる例だし、新規事業を見据えた技術開発もある程度他社がやっていることに近かったりする。

それに比べると、大学での研究議論はもっとぶっ飛んでいる(いい意味で)。 しっかりとしたジャーナルに通るような論文を書くことを求められる世界なので、 「新規性」をとても重視した議論になることが多い。 「世の中でまだ誰もしたことない体験を作る」議論だ。 分野や研究室によって違いはあるにしろ、HCI 分野の研究室はその傾向が強いと感じる。 例えば石黒研は、人間そっくりなアンドロイドで演劇をやってみたり半分機械のような体のロボットが菩薩として説法してみたり、 そういうことをやってきた先生方と議論すると、全く新しい体験の話になる。 一見、成り立ちそうにない体験でも、意外にやってみるとしっくりくることも多い。

いまの僕らはその両サイドを行ったり来たりしながら、議論し、プロトを作り、実験し、また議論している。 これはこの取り組みならではの体験で、大阪に来てよかったと感じる大きなポイントだと思う。

学校と会社のいいとこ取りしていきたい

大学としての研究スタイルも会社としての研究スタイルも、世界を面白くする上でどちらも重要なので、 いまの両サイドを行ったり来たりするスタイルでどこまでのアウトプットが出せるのか頑張ってみたい。

ちょうど今日(投稿時からすると昨日)、 研究者として地力をつける上で個人的にベンチマークとしていた CHI(HCI界隈の権威あるカンファレンス)に、第一著者の論文が採択された。

個人的には嬉しいニュースで、単純だがやる気が出てきた。

こんなにちょうどよいタイミングで心情を吐露できるアドベントカレンダー企画した @neo6120 には今度なんかあげよう。 6年目になると近しい同期たちは外に出ていて、新たな挑戦をしているのを見るのも刺激的だ。 たまに彼らと泊まりの旅行に行って、徹夜でアヴァロンして翌日何もせずに帰ってくるのも刺激的だ。

そんな刺激的な彼らやぶっ飛んだ先生たち、したたかなボスたちに囲まれて、 これからも世界を面白くしていきたいと思う。 おわり。

番組にノせられて京都の和菓子めぐってきたけど、行ってよかった話

先週の火曜に何気なく見ていた「マツコの知らない世界」で 「和菓子御三家の世界」と題して、和菓子特集がされていた。

大阪大学の石黒研究室と共同研究をしている身からすると、 マツコロイドのことが頭にちらつき、 もはやマツコデラックスは人間という枠組みの外にいるような、そんな気分で番組をながめてしまう。

ただ、番組で紹介される和菓子はほんとにどれもおいしそうで、 あまりにも心に響いてしまったものだから、番組中盤あたりから

「そうだ、京都にいこう」

と心の中で決めていて、そのまま指が勝手に Twitter に意気込みを書き込んでいた。

週末の金曜を迎え、トイレで旅程表を考える(下痢気味

ひとまず番組内で紹介されていた「虎屋」さんと「鶴屋吉信」さんは外せない。 幸い調べてみると、両方とも店内で食べられる茶寮がついているらしい。 10ヶ月の息子を連れ立ってゆっくり巡るには、朝1件、昼食を挟んで、午後1, 2件が限界だ。 ということで、昼食をとれる和菓子屋として、京都の老舗でおそらく最も古い「本家尾張屋」さんに行くことに。

テンションも腹痛とともにだだ上がり。

享和三年(1803)創業 鶴屋吉信

当日、まずは1件目の鶴屋吉信さんの茶寮にいく。 鶴屋吉信さんは江戸時代の享和三年(1803)に創業、約215年の歴史をもつ和菓子屋さんだ。

鶴屋吉信さんの本店は堀川今出川の交差点の北西角にある。 店舗のすぐ北側に10台分ぐらいの駐車場がある。車持ちにはありがたかった。 (京都を車で旅しようとすると駐車場代が高くつくのが困りどころ)

一階部分が販売店舗、二階に茶寮がある。 茶寮には2種類あり、目の前で和菓子作りの実演をしてもらえる6席程度のカウンター「菓遊茶屋」と、低めのテーブルが20個ほどあり中庭が望める「お休み処」とがある。

午前中にいくつもりが、準備にもたつき12時ちょうどに到着。 さすがにこの昼の時間ということもあり、ほぼ貸切状態。今回はせっかくなので「菓遊茶屋」で実演してもらった。

実演中はさすがに撮影するのは失礼かと思い、写真はない。 言葉少なに職人さんが見事な手さばきで和菓子を形作っていく。素早く何の迷いもない動きだが、丁寧に無駄なく彩られていく。 できあがった生菓子「若松」と「紅梅」は、食べるのがもったいないほどの上品な美しさだった。

朝飯抜きの体にじっくり甘さがくる。体に行き渡るのがわかるぐらい。 これで1000円は価値がある。ゆったりしたい人にはよい。

(この日、和菓子は直上から撮るのが一番きれいだと気づいた)

1465年創業 本家尾張

室町時代に菓子屋として創業、1700年ごろに蕎麦も始めたのが「本家尾張屋」さん。古すぎる。いい。 歴史ありそうなたたずまい。

13時すぎに到着。烏丸御池から北東に入った場所にある。 ここは駐車場が見当たらず、周辺のコインパーキングに停める。 昼の12-13時からずらしたにもかかわらず、まだ4組ほど並んでいて、人気なのがわかる。 韓国系のお客さんが多く、待っている列でも座ったテーブルでも周りの約8割は海外からのお客さんだった。旅行ガイドに載っているのかもしれない。

店の中に案内されると、外観からは想像がつかないほどの席数。 20席ぐらいかなと思っていたら、まさかの92席。 天井低めの日本家屋をずっと奥までいった座敷に案内してもらった。

なぜか学生の気分に戻ってしまい、一人で天ぷらそばと親子丼を注文してしまう。 頼んで30秒後ぐらいでも後悔し、料理が出てきても後悔した。食べきれなさそうさに。 が、食べてみると、そばも丼もすんなり入ってしまった。 いわゆる絶妙な安定感。いつ来ても外れなさそうなおいしさだった。

室町時代後期創業 虎屋

昼食の後、一服するためにおしゃれな茶寮がある「虎屋」さんへ。 京都で室町時代後期に創業し、1586年には京都御所出入りの御用商人として記載があったらしい。

ただ、「とらやの羊羹」という言葉は知っていたが、情けないことに食べたことはなかった。 マツコの番組でガッツリ取り上げられなかったら、たぶん行ってないかもしれない。

烏丸沿いに販売店舗があり、少し北にいったあたりにコインパーキングがいくつかある。 これまでの2店舗に比べると建物自体は新しく、今に合わせている感じがした。

販売店舗から西に入ると、モダンな建物の「虎屋菓寮 京都一条店」が見えてくる。

中は落ち着いた雰囲気で、中央付近にライブラリーがいくつも置いてあった。 虎屋の歴史に関する本から、和菓子を愛した偉人たちの本まで、歴史を感じたい方にはおすすめしたいおしゃれなカフェ。

入り口の反対側にはお庭があり、散策することもできるし、窓側の席やテラス席から眺めることができる。 (ちょうど快晴であたたかいときで、息子はここを散策している間に睡魔が一気にきているようだった)

昼飯を食べ過ぎたこともあり、ここでは落ち着いた和菓子を選択。 スタンダードな「夜の梅」はお土産に買って帰ることを決めていたので、少し違う生菓子「春の路」をいただく。

鶴屋さんに比べると、あんこの部分が固めでしっかりしている。そして、しっかり甘い。 息子が眠ってくれたこともあり、ここで1時間以上ボーッとできた。

落ち着いた雰囲気がとても居心地がよく、 「学生のときにここに来てもこの良さはわからなかったよね」「そうだよね」と、 嫁と二人で、学生のときに和菓子巡りをしなかった言い訳を互いに言い聞かせたりしていると夕方近くになったので帰阪。

番組にノセられた形となったが、大満足な一日だった。

戦利品

  • 鶴屋吉信から、生菓子5種と柚餅と京観世
    • 生菓子5種の左上のものは本店限定
  • 本家尾張屋から、蕎麦ぼうる
  • 虎屋から、夜の梅

本当は京都駅の伊勢丹阿闍梨餅とか買おうと思っていたのだけど、 3店舗でついつい買いすぎて食べきれるか心配だったのでまた今度の機会に。

今後は、大阪のたこ焼きめぐりでもするかな。